はじめに
シャーロック・ホームズって名前だけなら聞いたことがある人が多いかと思います。私は「名探偵コナン」にて主人公の工藤新一(江戸川コナン)がシャーロック・ホームズの大ファンという設定からシャーロック・ホームズの名前を知っていたのですが、よく考えてみるとシャーロック・ホームズを題材にした作品は全く触れたことがないな〜と。推理系やミステリー系の作品にほとんど触れてこなかった自分でも面白さを理解できるかどうか些か不安ではあったんですけど、問題なく十分にドラマ版「シャーロック」を楽しめたのでご紹介していきたいと思います。(気になってる方はまず1話だけ観てほしいです!)
ドラマ版「シャーロック」について
私のようなシャーロック・ホームズと助手のワトソンしか知らないような初心者がいきなりこのドラマ版「シャーロック」を見ると混乱するかと。(少なくても自分はめちゃくちゃ混乱しました。)というのも、そもそもシャーロック・ホームズの小説は19世紀のイギリスを舞台とした探偵・推理小説が原典であるかと思うのですが、、、このドラマ版シャーロックは明らかに年代が20世紀ってかまさに現代のイギリスを舞台にしているんですよね。。。前提としてシャーロックがベーカー街221番地に住んでいる風変わりな私立探偵、と元軍医でホームズと比較して常識あるジョン・ワトソンというホームズの助手の二人が続々と舞い込む依頼を解決していくのが本筋かつ変わらない部分であると思うのですが、
1話を視聴したときの率直に感じた疑問点として、
- ジョン・ワトソンは戦争の後遺症で精神疾患を患っており、PTSDと診断されている
- ジョン・ワトソンは、精神治療のためノートパソコンでブログを書いている。
- ホームズを始めとした主人公は全員iPhoneなどを携帯している。
- 事件の暗号やトリックにはパスコードや時限爆弾など最新の技術が使われている。
シーズン1の1話を観ているときは、自分の予備知識で言うと、「劇場版名探偵コナンベーカーストリートの亡霊」しか知識がなかったので、あの19世紀の産業革命で薄暗くて汚いイギリスが舞台だと思い込んでいたのもあって、視聴を始めたときは全体的に綺麗だし、てか現代用語(PTSDやiPhoneなど)が多数登場するので、まずここで出鼻をくじかれましたね…笑
登場人物について
再度強調して言いますが、自分は「シャーロック・ホームズ」作品を全く知らない無知な人なので登場人物についても混乱が生じました。ホームズとワトソンは知っていたからこの二人はまあ理解できる。だが1話を見るあたり時代設定と原作がずれている。ということはこれから登場するキャラクターたちはオリジナルなのか?それとも原作に登場している人なのか?どちらか区別が全くつかないという。一番の疑問が、ホームズの兄の「マイクロソフト」が登場したときですね。「マイクロソフト」ってあの「Microsoft」??これ本当に本名なの??と疑問が生じました…。レストレード警部、モリアーティ、アイリーン・アドラー、ハドソン夫人、モリー、メアリーなどなど、Wikipediaにて詳細なドラマ版シャーロックの解説があり、ここでようやく登場人物のほとんどが原作小説のまま、または一部性格や見た目が変更された形で登場していることを理解しました。
ドラマとは思えないシナリオ・設定・演出の数々
正直、自分は普段からドラマを見る習慣がないので脚本も演出も演技も全く期待などしていなかったんですよね(失礼ですいません)。実際見たら、演技力もすごい、脚本もドラマにしてはどの話しも1時間以上ある長編なのですが、無駄なシーンがなく伏線がよく回収されていく秀逸なシナリオなど見応えありまくりです。本当に話しは面白い。ドラマにするだけでは勿体無いくらいです。むしろ一本の映画並です。しかも話数がすぎてもそのペースが落ちることなど一切感じさせないんですよね。ここでまた疑問です。なんでこんなに脚本が面白いのかと、、、
これもWikipedia先生にお世話になりましたが、なんとこのドラマ、原作小説の一部分、一部分をオマージュかつさらに現代シナリオを組み合わせて作られているという。どうやらこのオマージュ部分がホームズファンの間ではテンション上がるそうで、例えば、ホームズとワトソンはゲイなのでは?と原作ではよく議論になるそうですが、ドラマ版ではしつこいぐらい、「僕たちはゲイではありません!」というセリフがよく登場しますw またホームズと言えば、鹿撃ち帽&パイプな渋いイメージ像が強いかと思うのですが、実は原作ではホームズが鹿撃ち帽を被るシーンはないとか。しかしシーズン2の1話ではあえて鹿撃ち帽を被らせるという制作側の意図があったりと、このようなネタは上げればキリがないみたいです。
個人的に勉強になった用語など(ネタバレ注意)
ホームズが推理するとき、これが天才か…ととても感心させられてしまいます。個人的ですが気なったものや用語などを少し纏めて行きたいとおもいます。
クリフハンガー
ドラマでよく使われる演出方法。シャーロックではかなり多用されていました。例えば、モリアーティの仕掛けた爆弾が爆発して終わるとか、ジョンがユーラスに撃たれて終わるなど。先が気になる終わり方が多くてほんとズルい演出だと思います。
シーズン1
1「ピンク色の研究」(原案;緋色の研究1887)
PTSD
RACHE
ダイイングメッセージ。ドイツ語で復讐。
連続自殺事件の真相
シーズン最初の事件だけあって申し分ない出来栄えだったのでは?と思います。誰が見ても明らかに死ぬ要素が全くない人が自殺をするという難事件。被害者の死んだ女性のダイイングメッセージが、娘の名前ではなく、それが携帯のパスワードを示しているというの見抜いたときはおお!となりました。犯人のタクシードライバーとシャーロックが一対一で対決するシーンは緊張感があってかなりの見どころであり、またシャーロックという天才が何を求めているのか、このイカれた犯人を通じて分かるようになっていました。
2「死を呼ぶ暗号」(原案;踊る人形1903と恐怖の谷1914)
蘇州ごま
LONDONA-Z
誰でも持っているような本。ただのロンドン地図。
自殺したかと思われていた人物が殺人と見抜いたシャーロック
被害者の死因は右のこめかみに空いた拳銃跡。実はこの被害者は左利きであるため、右に穴が空いているのは当然おかしいってなるわけです。部屋を観察して左利きの証拠を次々と見つけるシャーロック。この観察力はいつ見ても感心させらてしまいます。
3
クリフハンガー
シーズン2
1「ベルグレービアの醜聞」(原案;ボヘミアの醜聞1891)
鹿撃ち帽
原作では1度も被ったことはない。しかしシャーロックホームズ=鹿撃ち帽を被った探偵のイメージ像が強い。
車のバックファイヤーと、ブーメラン
全シーズンの中で一番不幸な死に方をしたなのではと。車のバックファイアの衝撃で土産に買ったブーメランが勢いよく飛び出して、それがたまたま平原でバードウォッチングしていた男性に命中して昇天するという・・・
バッキンガム宮殿
かと、思いきや、実際の撮影場所は、ロンドン大学、ゴールドスミスカレッジ。ここのジョンとシャーロックのやりとりとかただのコメディーで面白かったです。
蛍の光(オールドラングサイン)。イギリスでは新年を祝う曲。ドラマ「マッサン」にも度々登場していたが、元はスコットランド民謡。
アイリーンアドラーの暗号
シャーロックはその暗号が飛行機の座席であると指摘し、あっという間に暗号を解いた。全シーズンの中でカンバーバッチがこんなにも早口で喋っていたシーンはなかったんじゃないかなーと思います。
アイリーンアドラーのスキャンダル写真の隠し場所
イギリス王室直属の依頼。まさかの直接アイリーンアドラーの自宅まで乗り込むシャーロック。写真を回収するのが目的なのですが、当然その写真は見つからないように何処かに隠してあるわけです。シャーロックは女性の母性本能を逆手に取って、ジョンが外の廊下で火を炊く→警報が鳴る→アイリーンアドラーが大事な隠し場所の方向を一瞬見る、という方法で見つけるという。金庫のパスワードがアイリーンアドラーのスリーサイズってのは少々無理があるのでは?と思いましたが、まあまあといった感じ。
アイリーンアドラーの携帯のパスコード
これは外せない暗号解読トリック。「I AM “OO” ROCKED」。シャーロックにしては珍しく暗号解読に苦戦していて、ブログのカウンター数とか色々試していたんですが、アイリーンアドラーの脈を取ったりして、自分に恋愛感情を抱いていると推理し、そこでようやくパスコードが自分の名前だと分かるという。
コヴェントリー爆撃事件
WW1時代、実際にあった話し。ドイツのコヴェントリー爆撃(イギリス)をイギリス政府が知っていたにも関わらず黙認した事件。
幻覚を見せる霧
魔犬事件にて、依頼者が黒くて大きな犬を見た!過去に親父も殺されていて、次は自分が殺されると相談しに来た。勿論そんなUMAみたいなケルベロスのような犬なんているわけないとシャーロックは馬鹿にしていたが、実際に目撃し恐怖してしまう。あのシャーロックに恐怖という感情があったんだと感心していましたが、なんと犬は存在せず、原因は幻覚症状を出す霧だったという。
モリアーティの自殺まで
モリアーティの意図が全然分からなくて、、、シーズン2の最後なぜあれほどの男が自殺を選択したのか・・・・
シャーロック・ホームズの結婚式スピーチ
個人的にですが、シーズン1〜2のジョンとシャーロックの関係性の集大成であると思います。最初はただの依頼人であり、同僚でありやや友達?になってきたぐらいの関係が気付けばBest Friend。ただ、ホームズ自身が認めている通り、高機能社会不適合者。その不安は見事に的中し結婚式の雰囲気は最悪になるのですが、自分の品格を落とすだけ落として最後の最後でこんな自分とジョンを比較して持ち上げるという…すごい秀逸で感動的なスピーチでした。
スキップコード
ジョンが何者かに誘拐されたとき、メアリーに届いたメール。スキップコードが分かることが、メアリーの正体の伏線だったとは・・・と今更ながら思います。
アレクサンドリア図書館=アップルドア
恐喝王と呼ばれているマグヌセン、新聞社のCEOでありながら、情報という武器で相手の弱みをにぎり支配下にするとんでもないやつ。圧力点と彼は言っていたが。それらの極秘情報が保管されている場所がそのアップルドアという。シャーロックはその国をも動かす情報量から「アレクサンドリア図書館」と例えた。
カルヴァートン・スミスというサイコパス
HHホームズ、スイニートッドのパイ屋と、
話しの流れはかなり良かったですね。シャーロックは突然大物殺人犯に喧嘩を売るのですが、その理由が死んだメアリーのビデオメッセージという。またしても麻薬に手を出したり、ジョンにはボコボコにされたりと、兄のマイクロソフトにも弟の自己破壊が酷くて心配される始末。全ての行動がただ、哀しみのドン底にいるジョンワトソンを救うためだったと分かったときの感動は来るものがありました。
ハドソンさんの車
めちゃくちゃかっこいい赤い車。ただの家政婦のような印象が強かったですが、ここぞとばかりに麻薬界の妻設定をふんだんに使ってきますw
ジム・モリアーティ ヘリから登場するシーン
グレイの80年代の曲だそうで。死んだはずのモリアーティ、「Miss Me?」でイギリステレビをジャックしてからのシェリンフォード刑務所にてユーラスと面会するときの回想シーン・・・実は生きてたのか!っていう展開を期待していたんですが、やっぱり死んでました。残念!
ユーラス
ユーラスの意味について、ギリシャ語で意味は東風。4つある方位の中でも不吉な風とされる神話の女神の名前。これまで多くの伏線がありました。マイクロソフトの3番目の兄弟がいるという発言、東風が来るというバグダッドの商人の話し、シャーロックのトラウマ、赤髭という犬の話しなど。これら今まで謎だったことがこのシーズン4にて解明されます。
トロッコ問題
倫理学の思考実験。シーズン4ではユーラスが飛行機に載っている少女と乗客を救うために、シャーロックがジョン・ワトソンまたは兄のマイクロソフトのどちらかを撃ち殺せ!と迫った。ここでシャーロックがどちらも選択できず自殺しようとしたのは予想外の展開でした。
シーズン1→4の感想
やはり議論が別れますね。よく見かけるのがシーズン1.2のような迫り来る難事件を次々と解決していく展開が好きという意見。自分もこの意見に同意です。やはり、前半のモリアーティやアイリーンアドラーあたりの話しがこのドラマのピークであったなと思います。それ故に、シーズン3から4にかけては路線変更というか、物語の主軸が探偵・サスペンスからシャーロック・ホームズという人物のヒューマンドラマに焦点が当てられているように思います。シーズン3からは、シャーロックが死んで2年後、結婚するジョン・ワトソン、マグヌッセンと戦うために麻薬をやるホームズ、メアリーのためにマグヌセンを殺してしまうシャーロック、シャーロックを庇って死んだ最愛の妻メアリー、ジョンと絶交状態のシャーロック、死んだはずの妹ユーラスの登場。
さいごに
ドラマを見終わる頃にはすっかり自分もホームズファンになってしまいました。シャーロック・ホームズを全く知らない方でも、すでに知っている方でも楽しめる良作品ですのでぜひぜひ!!